不思議な事件?
 さて、ノートの殴り書きを見ると、結構物騒なことが書いてありますね。バスジャックを成功させる条件とかそういった研究もしていますね。結論は、複数犯でもまず不可能ということのようです。まあ、バスジャックした人間が逃げ切れるということを前提にしていますがね。しかし、政治的な思想を標榜する人間にとっては、多くの報道陣に取り巻かせることで特殊な思想を表意する場としてなら利用価値は大きいように思えます。複数の人間がバスに立てこもって全国遊説の場としてなら可能だということですね。こういった限られた目的でないと難しいですね。なんといったも目立つし小回りが利きませんから、逃走手段を別に用意する必要がありますね。
 ある期間、利用して警察へ直行でしょうね。国内をうろうろしても、所詮お釈迦様の手のひらの上の孫悟空ですからね。
 バスジャックやハイジャック、銀行への立てこもりも、単独犯では3日程度しか持ちませんね。だって眠る時間すらありませんからね。立てこもりの限界は単独犯では起きていられる時間で決まってしまいます。まあ、完全に敵?すなわち警察の強硬手段と人質の管理にあるといえるわけです。もし1人でやるなら人質の監視もしくは監禁が完全であるとき成立しますね。たとえば、人質は完全に監禁してあり、その部屋には爆弾が人質の手に触れられないところにあり、犯人は、警察などの強行突破に十分な時間耐えられるだけのところに立てこもっているときぐらいですね。そして、居眠りをするだけの強靭な精神力を有しているなんて条件ですね。
 まあ、計画性と、精神的な強靭性を持っていれば、金目当ての人質事件なんか起こす必要は多分ないでしょうね。まったく何の夢を見たのやら?やはり何か短絡的な行動を起こしたのでしょうか?犯罪を考えるとき、こういった暴力的な事件を引き起こすものはあまり知的ではないような感じがします。まあ、知的というのが目的達成の手段として最低のリスクの元に、現実可能な手段を実施するというものだとすればですね。
 夢が、人間を狂わせるのかもしれません。そういえば、インターネットやコンピュータへの夢がよくわからない変なビジネスを生み出して、投資家の心を騒がせたりもしていますね。
 しかし、この事件を振り返るときちょっと空しさを感じます。それは、どうも刑事事件として成立しない可能性があるというやつですね。近頃流行りの精神に問題があるため、責任能力の欠如というものですね。
 さて、再発は?多分防ぐことは不能でしょう。なぜかは確実に答える手段はありませんが、不特定多数が乗車するバス、乗客者名簿を作成することも不可能でしょう。バスという意味では、すべてのバスが乗っ取りの対象となります。あまりにも広範なものです。
 このバスはたまたま、営業所発営業所行きですから、定時運行という面で確実なチェックがかかりますが、普通の路線バスだと、乗務員の交代とかそういった場合ではなければ気が付かないのでは?
 まあ、路線バスに乗客らしき人々がたくさん乗って路線でないところを走行していたら?確かに気になりますが、通報する人は?皆無でしょう。報道の対象になってはじめて見たぞ!なんて状況に発展していくに違いありません。しかし、あまりにも衆人環視の中で存在する密室という部分が問題ですね。
 ですから、事件としても起こした人間はあまり大した目的意識をもっていませんから再発防止策も色々考えるでしょうが空しいものですね。まあ、どんなことをしても、バスジャックは成功しない!ということを示せればよいのですが、人の価値観は多様ですから、この面も無理ですね。
 何しろ、地位も名誉も金も要らない、ただ、多くの人と一緒に死にたいなんて、自殺志願者にとってはね。すべては夢と、その夢に懸ける情熱の問題ですね。可能性を考えることは面白いですが、こういった空しいものはちょっとね。純粋な犯罪(金・地位・名誉など価値あるものとされるものを奪取するもの)であれば、その過程をスリリングに表現することで小説という価値あるものに変わりますが、この事件ではね?考えるだけ無駄ですかね。

       

随想録として