いかにしてITの最先端国家になるか
 なにやら第150回臨時国会で大風呂敷を広げている人がいますね。なんと、日本を超高速インターネットを整備して、5年後に情報通信の最先端国家に仕上げるなんてやっています。ちょっと不思議なものですね。超高速回線を引いたところで、それでIT最先端国家になれるか?私はなれないと思いますね。世界の中心とは?それは、高速な回線が存在するところではなく、超高速回線が必要になりそれを引き管理していくところだと思います。たとえ今の日本にそういった超高速インターネット回線を整備しても多分、CATV風の利用、つまり、製作会社が流す番組が流れるだけとか、映画が垂れ流しになっているようなものになるのではないかと思います。
 現在、米国がインターネットの総本山の形になっている理由は、もちろん、最新の技術が次々と生まれ、その技術を利用した成果物が次々と生まれているからですね。
 そして、インターネット上に優秀なコンテンツが蓄積しているからです。ですから、人は情報を求めて米国に集まるというわけですね。そして、そこには高速な回線とサーバー群が控えていますから、人は物理的な距離を越えてインターネットという空間を超越するコミュニティーを探索し、自分のコンテンツを付け加えていくのでしょう。
 私のところもCATV回線を利用したものですから、結構高速です。そして、多分海の向こうのサーバーもホームページスペースとして利用しています。また、アクセス統計も一部あちらのサービスを利用していますからね。
 さて、5年後にIT先端国家になるには?まあ、よっぽど日本にそれなりのものが無いとダメですね。例えば、セキュリティーの認証であるとか、暗号化のものであるとか、そういったシステムの根幹になる認証作業を行うような機関が日本に存在しないとダメですね。
 サービスを利用する上でのさまざまなものを、日本から、提供しないと無理なんですね。メッカはカーバ神殿を有する聖地ですから、自ずと人が集まり、そこに向かって礼拝が捧げられるわけです。日本にこのカーバ神殿をそのまま持ってきても、そこにその精神がなければ礼拝の対象にはならないということと同じですね。
 果たして、超高速回線を引くことが、繁栄の基礎となるとは思えませんね。まあ、この超高速回線というのは面白いです。しかし、国内に引いたのではダメですね。日本とカリフォルニアを結ぶ帯域の広い超高速回線ならね、太平洋を越える虹の梯なら言うことはありませんね。メッカへの最短距離になるのですから、メッカの栄光の一部を得、そして、大輪の花をつけてくれるかもしれません。しかし、国内で、例えば、東京大阪間を超高速回線でつないだところでその利用価値というものはたいした成果は見られないような気がします。
 さて、なんといっても、日本を総本山としたいのなら、文化に貢献しないといけませんね。そして、さまざまな規格の策定を行う組織を誘致したり、作ったりしないといけないでしょう。例えば、楔形文字の文献のすべての電子化されたデータが日本にあり、それを中心に研究が行われるとかですね。まあ、大英博物館が機知の楔形文字の粘土板の多くをもっているので、研究者は大英博物館を目指すというのと同じでしょう。そして、成果物もそこで公開するという、アーカイブが整備されれば、それで一つのメッカが創出されます。まあ、アレキサンドリアの図書館が旧世界の学問の中心になれたのは、そこに研究対象の全てがあったからに他なりませんからね。
 そういった研究の場があればこそ人は、コンピュータを利用して自分の関心分野について、情報を得、そして自分の研究を付け加えるためにそこに現れることになると思います。
 演劇の全てがあれば、演劇に興味のある人は出向くでしょうし、相撲の取り組みのすべてのデータがあり、高速回線が普及した暁には、すべての記録されている取り組みの画像があれば、コンピュータに感心がなくとも、それを閲覧するためにコンピュータを使うでしょう。すべての人が満足するだけのコンテンツがあり、それに向かってアクセスする人の満足を引き出せる回線であれば、当然利用率も増えるでしょう。大リーグの全試合の記録が日本にあれば、米国人だってそれを求めて日本へやってくるでしょう。
 日本には、素晴らしい劇場がバブル期にたくさん作られました。国際会議場も美術館もどれも素晴らしい建物です。しかし、そこに収められたものは?そして、それがどれだけ活用されているのでしょうか?やっぱり、世界に誇れる何か中身ですね。古今東西の書物をすべて電子化し公開するというプロジェクトを行い、その言語の表記のためにトロンを基礎とする例の超漢字なんってものを使えば、それだけでトロンは文献研究の分野ではスタンダードとなりうるし、その文字コードを日本で管理するのなら、それだけで文献研究のメッカは日本となるわけです。地域を越えることができるインターネットも、その情報を管理する能力をもち、現実に管理するところが、世界の中心だということですね!
 果たして、高速回線と、パソコンの習得に力を入れたところで、こういった壮大な構想まで辿り着くやら?結局、穴を掘って、そこにケーブルを埋設したいだけになりそうな、嫌な予感がしますね。
 まあ、巨大なサーバーを作って、誰でも、世界中の人に容量無制限でホームページスペースを貸したらどうですかね?そうしたら、日本に莫大な知識が集積するかも知れません。まあ、頑張って価値あるものを創出してもらいたいものです。