トロイア滅亡
 さて、アガメムノンと和解して戦場に赴いたアキレウスは運命のヘクトルとの決戦へと導かれていきます。そういえばヘクトルについてがまだでしたね。
 ヘクトルはトロヤ戦争での、トロイア方の最大の勇士です。ほとんど彼一人で戦線を支えていたのでは?と言えるくらいの活躍をしています。
 ヘクトルはトロイア王プリアモスとヘカベの間に生まれた長男です。非常に無骨な人間ですが責任感が強い人物として描かれることが多い英雄ですね。さて、この人物結構貧乏くじを引いているともいえますね。何しろ、ギリシアから美女ヘレネを奪い帰って戦争の原因をつくったパリスの兄ですからね。まあパリスをののしりながらもつねに前線に立ち指揮をとっています。そして、運命の日がやってくるわけです。
 さて、ごたごたの後に、戦線に復帰したアキレウスは見事ヘクトルを討ち取ります。そして、そこでちょっとやりすぎてしまいます。
 それは死せるヘクトルの踵に革紐を貫き通し、死体をトロイアの回りを三度の戦車で引き回し、幕舎の外で野ざらしにして辱めます。
 しかし、神々がそのヘクトルの遺体が損なわれることを防ぎます。そして神々はイーリス使いにして王プリアモスに息子の遺骸を贖い受けるように命じるとともに、アキレウスに彼の母女神テティスの死者に敬意を払うようにとの忠告を挿せています。これにより、プリアモスは莫大な富をもってアキレウスのもとより遺骸を贖いだします。そして休戦期間中にヘクトルの葬儀がしめやかに行われます。このころの戦争って結構のんびりですね。
 さてヘクトル敗死の後も戦争の決着は簡単につきません。そこでトロイア王プリアモスに恩のあるアマゾネスの女王ペンテシレイア Penthesileiaが参戦します。ペンテシレイアも善戦しますが、最後にアキレウスの剣に右胸を貫かれて戦死します。このペンテシレイアの死に臨んでアキレウスはその死に際のペンテシレイアの美貌に感動しその死を嘆いたと伝えられています。この他にもエチオピア王メムノンのやってきますがアキレウスに倒されてしまいます。
 しかし不死身のアキレウスも死の運命がめぐってきます。やがてアポロンに導かれたパリス(パリスに化けたアポロン?)の矢をかかとに受けて命を落とします。そして彼の有名な鎧の継承をめぐる争いがおこります。さて、トロイアが落城するにはいくつかの条件が成り立たないといけないことになっています。アキレウスの息子、ネオプトレモスが戦いに参加すること、ヘラクレスから譲られた弓の持ち主であるフィロテテスが参加すること、そしてトロイアの宮殿奥深くに秘蔵されているアテナ像パラディオンを盗み出すことです。さて、これらのことは、オデュセウスなどの活躍により成就されます。そして、決定的な知恵が女神アテナよりギリシャ軍に与えられます。それがトロイの木馬です。外からは難攻不落のトロイアの城砦も内部からの手引きがあれば、そして油断があれば落ちるということなのでしょう。そして、巨大な木馬が完成し中に兵士を潜ませ、ギリシャ軍は全軍引き上げたかに見せかけます。
 ここでトロイアの世論は2つに分かれます。1つは城壁を切りくづしても、場内に木馬を引き入れ女神アテナへささげようという一派と、これは計略である、焼き捨てよ!という意見の対立が起こります。ここで、搬入反対派としてラオコーンが登場します。
 ラオコーンはトロイアのアポロンまたはポセイドンの神殿の神官です。この男ちょっとまずい前科があります。それは、アポロンの怒りを買っているんです。何をしたかというと、神の戒めである独身を通さず妻帯したためとか、神像の前で妻と交わったためともいわれますがはっきりしませんね。さて、この議論のさなか、ラオコーンはこの木馬の腹を槍で突きます。これに怒ったか冷や汗をかいたかのか、アテネは2匹の海蛇を放ちます。一説によれば、かつての篤信行為を怒ったアポロンによって放たれたともいわれます。そして、このように無残に絞め殺されたラオコーンを見てトロイアの人々は城内へと木馬を引き入れます。
 右の写真はバチカンより略奪してきたラオコーンです。紀元前1世紀ロドスの彫刻家、アゲサンドロス、ポリドロス、アテノドロスの合作だそうです。
 さて、トロイの木馬を城内に引き入れることで落城したトロイアはでは、老いたプリアモス王をはじめ男たちは惨殺され、ヘレネは元の夫メネラオスの手に戻されます、そして、王妃ヘカベ以下の女たちは捕らえられて、ギリシアの英雄たちが分け合います。しかし、アイネイアスだけは脱出に成功します。この人物は新天地に新たなトロイアを建国することになります。それがローマなのだそうです。さてやっとローマへとつながっていきますね。