経験としての殺人
 ちょっと珍しいですね。殺人を経験しておきたかった?だって??言葉として矛盾を感じますね。だって、経験を重ねることによって熟達するというものですから、殺人を経験することは殺人の技を高度に磨くために必要なんですからね?技を磨くというのは、一般いにポジティブな事に関して言うもののような気がします。
 しかし、この経験を積むと、他にも付帯的に、逃走の経験とか、逮捕・監禁ということも経験できます。そして、裁判、刑務所や少年院などの施設、そしてそこに収監されている人たちの交流も体験できますね。1つの体験から派生するさまざまな経験を積むことが出来ますね。
 一般に殺人という経験を積むことで派生する経験、まあ人生行路なんて旧式な言葉で表現される、後戻り不能の航路を選択するものであって、ロールプレイングゲームの経験値を上げるというのとはぜんぜん違ったものだということです。
 そういえば、日本のロールプレイングゲームって、この致命的な経験というものをした場合という規定を持たないですね。欧米のゲームでは、ヒーローを育てる場合、ときたまゲームの初期に無意識に行った卑劣な行いが最期まで付いて廻ってゲームのクリアーを拒否する場合がありますね。つまり、ゲームの中でも明示的な間違いの提示などをせずに、そのまま悪の種を持ったまま育っていく、まあ原罪という概念のようなものを設けているのかもしれません。まあ、これなんかはルールブックに載っていない、自分がここにいてリアルに生きているという、生活の根源に相当するルールのような気もしますね。
 まあ、殺人という体験によって、ある種の原罪を背負い込むことにより、更生の道は長く・・・永遠に続くということになるわけです。ゲームなら、育てていたヒーローを殺すことで生まれ変わらせて、再度ゲームに挑戦することが可能ですが、現実の生活の中では、再ゲームはありませんからね。つねに、人生行路の選択のターニングポイントになるものが存在し、選択は回復不能であるということですかね。
 まあ、知識や経験というアイテムは、使わないとかそういうことで対応できますが、ある経験について廻る、押し付けられる経験、たとえば、殺人者として社会からつねに監視される経験とか、そういったものですね。
 そういえば、実刑判決を伴う判決を受け、刑期を明けて社会復帰しても、住所地を変更する場合、届出が必要であるとか、そういった規定がどこかにあったような?
 まあ、そういったような、犯罪による社会的な立場というものにかんするものというのが十分に知らしめられていないのでは?という気がします。
 現在、良く知らしめられているものは、罪を憎んで人を憎まず。罪刑法定主義の原則とか刑期を勤め上げて社会復帰すると、過去の罪を償い、過去の罪は忘れ去られる。など、刑期を勤めることで、完全な社会復帰が可能であるなどという迷信的なものですね。私だって、隣に殺人事件を起こし実刑判決を受け、刑期中に反省の色が濃いため、模範囚として減刑され娑婆に戻ってきた人間が隣に住んでいたら落ち着きませんからね。強盗殺人なんか起こした人間の前で、金勘定とか財布の中を見られるような大きなリスクを犯したくないとか、そういったあたりまえの反応をしましますからね。
 こんな具合に、ある種の経験に伴うもの、まあ、その人間にレッテルを貼るような経験行為なんて、ちょっと経験したくはありませんね。殺人事件を冒した警察官とかこういったものはまずいですね。社会的地位とその人間の両方からの大きなレッテルを貼られてしまいますからね。
 しかし、この立場から犯罪というものの人生における位置付けをすると結構厳しいもの、ハイリスクな物ですね。いくら、刑期を勤め上げたからとはいっても、すでに一般人として生きることは困難ですね。近くで同種の事件が起これば、それだけで被疑者、つねに潔白を証明できる行動を取らねばならない、突如、警察官や刑事がやってきて職務質問、この日時に何をしていた?というやつですかね。証明できるか?となるのでしょう。
 結局、社会復帰というのは遠い幻影のようなものなのかもしれませんね。同じ経験を共有するものの仲間の中でしか生きられないということなんでしょうね。
 ちょっと、差別論者になって、このあたりの差別の研究をしてみますかね?宗教もある意味そうですね。○○という宗教の信者になりました。社会的に状況が悪くなったので信者であることをやめました!となっても元○○教の信者という新しいカテゴリーに移動するだけですね。なるほど、元警察官とかそういった言い方って、人間をあるカテゴリーの中に閉じ込めていることを示す言い方なんですね。元殺人者、殺人者にいつ復帰するかわからないということですね。急迫不正の侵害に止むこと得ざるによっても、殺人なんて体験をするつもりはありませんね。人間の評価などは時々変わりますが、状況如何でも殺人を犯したものは・・・それにより新たな原罪を負うことになりますからね。 

       

随想録として